市街化調整区域の土地はどう売れる?売却・建築のポイントと規制の理由
2025年09月02日
市街化調整区域に土地を所有している方の中には、売りたいけど買い手が見つかるか不安‥建物は本当に建てられないの?といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
市街化調整区域は、通常の宅地と異なり建築や開発に制限があります。ただし条例や地域の条件によっては、例外的に建築や開発が認められるケースもあります。
この記事では、市街化調整区域の土地が売れにくい理由や売却のポイント、建築規制の背景、例外的に許可されるケースについてわかりやすく解説します。
目次
市街化調整区域とは?
市街化調整区域とは、都市計画法に基づき「市街化を抑制する地域」として指定されたエリアです。
ここでは原則として建物の新築や大規模な開発は制限されており、農地や山林、自然環境を保全する役割があります。
調整区域は、無秩序な住宅や商業施設の建設を抑制することで、道路や上下水道などのインフラ整備コストを抑え、自治体の財政負担や生活環境の悪化を防ぐ目的があります。
市街化区域との違い
- 市街化区域
今後10年以内に優先的に市街化を進める地域。住宅や商業施設の建築が容易で、インフラも整備済み。 - 市街化調整区域
原則として建築や開発は制限されるが、既存集落区域や市街化区域に隣接・近接する集落では例外的に許可されることもある。条例や地域条件によって建築可能な場合もあり、単純に「建てられない土地」と決めつけることはできない。
なぜ建築や開発が制限されるのか
市街化調整区域で建築や開発が制限されるのには、大きく3つの理由があります。
- 無秩序な開発を防ぐため
制限がなければ、住宅や店舗が点在しインフラ整備が追いつかなくなります。道路や上下水道、電気・ガスといったライフラインが分散して整備されると、自治体や住民に過大な負担がかかります。 - 農地や自然環境を守るため
都市の無秩序な拡大は農地の減少や森林破壊につながります。農業や緑地を守り、自然環境を保全するために、調整区域では宅地化や工業化が抑制されています。 - 災害リスクを避けるため
調整区域には、浸水想定区域や土砂災害警戒区域など、災害の危険が高い土地も含まれています。こうした場所に住宅を建てると住民の安全を脅かすため、原則として開発は許可されません。
市街化調整区域内でも例外的に許可されるケース
市街化調整区域では原則として建築は制限されますが、条例や自治体の判断によって例外的に許可されることがあります。代表的なケースは以下の通りです。
- 分家住宅
親の家がすでにある敷地で、子世帯が新たに住宅を建てる場合など、条件を満たせば許可が下りることがあります。 - 農林漁業を営む者の住宅
農業・林業・漁業を本業とする人が、その事業を継続するための住宅を建築するケースです。 - 公共公益施設
学校、消防署、医療施設、地域の生活を支える店舗など、住民の生活に欠かせない建築物は許可されることがあります。 - 既存集落区域や条例指定区域
古くから集落が形成されている地域では、地域の維持を目的として住宅の建築が一部認められることがあります。 - 市街化区域に隣接・近接する集落
インフラ整備の状況などによって、住宅や小規模な開発の許可が出る場合があります。 - 移住促進・空き家活用などの自治体施策
人口減少や空き家対策のため、自治体が調整区域での建築を緩和しているケースもあります。
市街化調整区域の土地が売れにくい理由と需要の実態
市街化調整区域の土地は、建築許可の取得が必要で手続きも複雑なため、需要は一律に低いわけではありません。
- 手続きや条件を理解する必要があるため、購入希望者が限られる
- 住宅ローン利用の可否もケースによる
- 災害リスクの高い区域では住宅建築がほぼ不可
つまり「需要がない」のではなく、「手続きや条件を把握できる人が限られる」という実態です。
売却できるケースとできないケース
- 既存宅地
古くから建物がある土地は既存宅地として売却できる場合があります。 - 農地の転用・用途変更
農地の場合は、農地法だけでなく都市計画法や自治体条例など複数の法令に基づく手続きが必要です。 - 隣地との一体利用
隣接地をまとめて活用したい買主に対して、適切な説明ができれば購入されるケースがあります。 - 公共事業用地や自治体施策による買取
道路や公共施設の用地として、または空き家活用のために自治体が購入する場合もあります。
売却時・活用時に気をつけたいポイント
市街化調整区域の土地を売却・活用する際は、複数の法令や手続きが絡むため注意が必要です。特に次の点を確認しておきましょう。
- 建築許可と開発許可の違い
住宅を建てる場合は「建築許可」、土地を造成して区画を変えるような場合は「開発許可」が必要です。開発許可の方が審査基準は厳格です。 - 複数法令の遵守
農地を宅地に転用する場合は「農地法」、都市計画上の規制は「都市計画法」、さらに自治体ごとの「条例」も関係します。複数の法律をクリアする必要があります。 - 災害リスクの確認
浸水想定区域や土砂災害警戒区域では建築や開発が制限されるため、必ずハザードマップで確認しておきましょう。 - 行政窓口での詳細確認
土地利用を検討する際は、必ず都市計画課や農業委員会などの行政窓口で事前に相談してください。 - 許可申請にかかる時間と費用
申請には数ヶ月以上かかることも多く、追加資料や修正が必要になる場合もあります。余裕を持ったスケジュールを組み、専門家(行政書士・建築士など)に相談するのが安全です。
売却を有利に進めるための工夫
- 市街化調整区域の売却経験がある不動産会社に相談する
- 条例や許可要件を整理し、買主に正確に説明できるようにする
- 隣接地所有者や農家など、実際に活用可能な層にアプローチする
- 空き家活用や資材置き場など、具体的な利用方法を提案する
まとめ
市街化調整区域の土地は、原則として建築や開発が制限されますが、既存集落区域や条例指定区域、自治体施策により例外的に許可される場合もあります。
土地を売却・活用する際は、
- 建築や農地利用の可否を正確に確認する
- 複数の法令や条例に基づく手続きを理解する
- 経験のある不動産会社や行政窓口に相談する
ことが重要です。これにより、用途制限があっても適切な買主を見つけ、安心して売却や活用を進めることができます。
「売れるかどうか」「活用方法が知りたい」といったご相談や査定は、無料で承っております。
少しでも不安や疑問があれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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